前 次 最新 一覧
文/植木 務(大島村田麦地区在住)

[2001年1月15日]

<赤い雪>
 車の出し入れの為に入り口の幅を広めようとして、ガレージ前を雪掘りしていると、何か違う雪があるのです。まずスコップで堆(うずたか)い雪に縦横に切れ目を入れてそこまでを下から掬って除雪します。これを繰り返して掘り進みます。縦に切れ目を入れた所が、地層の様に上の新しい雪から下の古い雪まで幾つかの層を為しているのが見られます。それが何時もと違って何かおかしい、色ずいて汚れた雪の層が有るのです。

 降り始めの霙混じりの雪や、車や人通りの多い所の地面の雪は汚れた感じに色ずきます。それを道端に除けると、後で掘り出した時に色ずいた層が見られます。丁度そんな層が有ったのです。田麦の我が家の周りでは、あまりそういう事は無いのです。普通 は白い雪の層なのです。その時は何かおかしいとは思いながらも、大して気にもせず作業をしていました。

 後日会社仲間の雑談の中で「赤い雪」が降った、という話が出ました。
別の場での会話でも「赤い雪」の降る年は大雪だという言い伝えがあって、今年は夫れが降ったから大雪かナア、と来ました。ハハーンあれがそうだったのか。やはり変な雪が降ったのだなと合点がゆきました。

 思い返すと1/3、4の吹雪の時が「赤い雪」だった様です。その最中は全く気着きませんでした。おかしいと云っても真っ赤ではありません。でも真っ白ではないのです。汚れた感じの色でした。それを当地では「赤い雪」という様です。初耳でした。例年は春先に降るそうです。多分年初の強風で中国北部の黄土が舞い上がり日本海の雪雲に混じったのでしょう。
「黄砂」の冬季版てとこでしょうか。


<これでも暖冬か?>
・朝で一尺、夕までに一尺
 今冬一番の寒波の由。11日(木)の夜より降り始めて今日で4日目、雪が降り続いています。朝毎の新雪一尺、雪踏みしても夕方には更に一尺降り積もっています。今日は夫れが40cm。シャベルの四角いカネの部分が約30cmですから、朝玄関を出て新雪にシャベルを潜すと大体の降雪量 が解ります。裏山のブナ林は積雪2m。初冬に自室から見て目の高さのブナに物差しを括り付けました。吹雪で吹き飛ばされたり樹上の枝で受け止められたりしてもこれだけですから謂ゆる観測上のデータはそれ以上でしょう。

・エントツ掘り
 我が家の一階部分はほぼ雪で埋まりました。玄関、台所、北側の部屋などは窓がすっかり埋まりましたので、昼なを暗き部屋々々です。ただ南向きの居間だけは未だ光が入ります。ここだけは暗さを嫌う家内が、毎日雪掘りをしているお陰です。天窓からの光だけは確保したいという悲願なのです。
 振替休日の今日の午後、雪の止み間を狙って台所の換気扇の排気口と、給湯ボイラーのエントツを掘り出しました。いずれも雪に埋まっているので台所から居間に排気が籠もって、「二酸化炭素中毒で田麦で二人人事不省?」などというニュースにならない為の作業です。

<鳥追い>
「農家の年中行事の一。正月14日の晩から15日の暁にかけて、田畑に害を与える鳥獣を追い払う歌をうたい、若者たちがささらまたは槌・杓子・棒などを打って家々を回ること(広辞苑)。」

 田麦には「鳥追い」の行事が今も存続しています。村内でも数少ないのではないかと思います。今回初めて家内と共に参加してみました。
 14日の夜は、折からの大雪の最中。降りしきる雪の中「庄屋の家」を6:30pm出発。菅笠に蓑を着、胸の太鼓を打ち鳴らすリーダー、その掛け声に続いて一堂がうたう。「とりぼい(鳥追い)だー、とりぼいだー、じいろうどんのとりぼいだー、・・かーしらきって(頭切って)ぼーきって(尾切って)・・ ホーイホイ 」。
 言葉がよく聞き取れませんでしたが、まだ「朱鷺(トキ)」が害鳥だった頃、それを佐渡へ追い払う、といった意味の様です。主役は子供達。その親、参加者、世話役たちに、カメラマン、一行30人程。家々を訪れる事はなく田麦集落内の民家の多い道を一巡りして出発点に戻りました。


<塞の神・田麦の火祭り2001>
 例年は小正月(祭日:成人の日)に行われていましたが、今年の15日は月曜日で祭日ではないために変則になりました。
 即ち、前日の日曜日にドントの塔造り。ときどき吹雪く荒天、風上に背を向け、手袋の中の指先が痛いほどの冷たさ。8:30−11:00頃まで、昨年同様40人近い人々の共同作業でした。完成した8m程の塔は防雪の為ひとまず3枚のシートで覆われました。
 古くからのしきたりにより、点火は翌15日の夜。「邪霊の侵入を防止する神:塞の神」を祀る今年の田麦の火祭りも大層華々しいものでした。

前 次 最新 一覧